iPadでZoteroの論文を読んで書き込む現実的な方法は4つあります。Zotero公式アプリ、PaperShip、PDFを渡して使うGoodNotesのようなノートアプリ、そしてRectoly for Zoteroです。
私はRectolyの開発者なので、Rectolyの列は、メーカーが自社製品を並べた比較表を読むときと同じ目で見てください。以下はすべて2026年9月24日にApp Storeの掲載情報とZoteroフォーラムで確認したもので、ほかから引いた事実には出典を付けました。間違いがあればお知らせください。すぐ直します。
結論の表
| Zotero公式アプリ | PaperShip | GoodNotes(PDFを渡す) | Rectoly for Zotero |
|---|
| 開発元 | Zotero | Shazino | Goodnotes | 独立した開発者 |
| App Storeの最終更新 | 2026年6月25日(2.0.7) | 2019年11月13日(3.8.5) | 2026年9月21日(7.1.24) | 2026年9月24日(4.0.0) |
| 価格 | 無料 | 無料、注釈ツールはアプリ内課金 | $28.99の買い切り、または年$11.99 | 14日間の試用後 $19.99の買い切り |
| Zoteroライブラリを開く | できる | 2025年末からサインイン不能との報告 | できない。共有シートでPDFを1本ずつ | できる |
| ハイライトとメモがZoteroに戻る | 戻る(Zoteroの注釈として) | PDFファイルに書き込まれる | 戻らない(GoodNotesに残る) | 戻る(Zoteroの注釈として) |
| Apple Pencilの手書きがZoteroに戻る | 戻る(Zoteroのインク注釈として) | PDFファイルに書き込まれる | 戻らない(GoodNotesに残る) | 戻る(Zoteroのインク注釈として) |
| 2段組を1カラムに組み直す | しない | しない | しない | する(読書モード) |
| ZotFile / ZotMoovのリンクファイル | 開けない | 開けない | 自分でファイルを渡せば | 開ける(iPad上の同期フォルダから) |
| グループライブラリ | 対応 | 対応 | 非対応 | 対応 |
| MacとWindowsでも | Zoteroデスクトップ | Mac(同じ2019年版) | Mac | MacとWindows、同じ購入で |
以下は各セルの根拠です。
「Zoteroに戻る」とは何か
いちばん大事で、いちばん誤解されやすい列なので最初に書きます。
ZoteroはハイライトをPDFの中に保存しません。ライブラリの中に論文に紐づいた注釈アイテムとして持ち、ほかのアイテムと同じように同期します。デスクトップで付けたハイライトがスマホに出るのはそのためで、Zoteroの形式に手書きのための欄があるのも同じ理由です(詳しくはZoteroは、iPadで付けた注釈をどう扱うか)。
だから各方法で問うべきは「ページに描けるか」ではなく「描いたものがZoteroの注釈になるか」です。なるなら、論文と一緒にどの端末にもついてきます。PDFファイルに書き込まれるだけなら、Zoteroのリーダーはそれをページの画像の一部として表示し、注釈として編集・検索・削除はできません。Zotero 7には後からPDFの注釈を取り込む機能がありますが、2025年8月のフォーラムのスレッドに、手書きのインクとフリーテキストは取り込まれないと記録されています。
Zotero公式アプリ
比較の基準になるアプリです。無料で、Zotero本体の開発チームが作っていて、注釈は正しくZoteroの注釈になります。ハイライト・メモ・範囲選択・Apple Pencilのインクがすべて、グループライブラリも含めてZoteroの注釈として同期されます。EPUBとウェブのスナップショットも読めます。これができるのは公式アプリだけです。
できないことが2つあり、どちらもZoteroのスタッフがフォーラムで明言しています。外部アプリでPDFを開くことと、リンクファイル(ZotFileやZotMoovがDropboxやGoogle Driveのフォルダに移したPDF)を読むことです(External pdf reader support on iPad、2025年7月)。ライブラリがリンクファイル中心なら、フォーラムでの回避策は、出張の前に数本だけZotero Storageに移して、戻ってから元に戻す、というものです(iPad for reading annotating pdf books then sync back)。
また、PDFをそのままの版面で表示するので、2段組の論文を11インチで読むと拡大と移動の繰り返しになります。それが気になるかどうかは、iPadで読む量とノートパソコンで読む量の比率次第です。
PaperShip
PaperShipは長いあいだ、この問いへの答えでした。ZoteroとMendeleyのライブラリを読み、ハイライト・メモ・手描き・スタンプでPDFに書き込めます。米国App Storeに926件の評価があるのは、その歴史の長さの表れです。
2026年9月時点の状況はこうです。現行版は2019年11月13日公開の3.8.5で、それ以降更新がありません。最近のApp Storeレビューには、Zoteroへのサインインが完了しないという報告があります(2025年10月のレビューはOAuthのやり取りが失敗すると書き、2026年3月のレビューはZoteroがログインに追加したcaptchaにアプリが対応していないと書いています)。2025年1月のレビューは注釈がMendeleyに同期されなくなったと書いています。現在のサインインの挙動を私自身で確かめられてはいないので、「壊れている」は「壊れているという報告があり、1年直っていない」の意味で読んでください。
サインインできたとしても、注釈はPDFファイルに書き込まれます。Zoteroのリーダーにも表示はされますが、ページの一部として見えるだけで、編集や抽出のできる注釈にはなりません。
GoodNotesにPDFを渡す
厳密にはZoteroのアプリではありませんが、実際に多くの人がこう使っているので入れました。Zoteroのアプリで論文を開き、PDFをGoodNotesに共有し、そこで読んで書きます。GoodNotesのペンの書き心地は評判どおりで、45万5千件の評価がそれを裏付けています。
そのかわり、ライブラリとのつながりを失います。GoodNotesが持つのはファイルのコピーで、書いたものはすべてそのコピーに残ります。ハイライトをZoteroに戻すには、注釈付きPDFを書き出してアイテムに添付し、Zoteroの取り込みを実行します。ハイライトとメモは戻りますが、手書きは戻りません(上のスレッド)。ほとんどの人はこれをやらず、読書メモはZoteroの論文の記録から切り離されたまま、GoodNotesの中に残り続けます。
価格は$28.99の買い切りか、Essentialプランで年$11.99です。ほかの用途ですでにGoodNotesを買っているなら追加費用はかからず、これは確かな利点です。
Rectoly for Zotero
Rectolyは有料の第三者リーダーです。公式APIでZoteroアカウントにサインインし、ライブラリとグループライブラリを読み、ハイライト・下線・メモ・Apple PencilのインクをZoteroの注釈として書き戻します。次の同期のあとデスクトップのZoteroに現れ、そこで付けた注釈と同じように振る舞います。
公式アプリと違う点は2つです。ひとつは、2段組の論文を1カラムに組み直し、その上でハイライトも手書きもできる読書モード。もうひとつはリンクファイルで、ZotFileやZotMoovが使っているDropboxやDriveのフォルダがiPad上にあれば、RectolyはそこからPDFを開き、注釈はやはりZoteroに送ります。iPadで追加した論文は通常どおりZotero Storageに入ります。添付をZotero Storageではなく自前のWebDAVサーバーで同期している場合も、4.0以降はiPadでそのまま読み書きできます。
限界も正直に書いておきます。14日間の試用のあとは$19.99の買い切りで、Zoteroの公式アプリは無料です。読めるのはPDFだけで、EPUBやスナップショットは読めません。そして、独立して作っているプロジェクトです。App Storeの掲載は2026年9月のもので、実際の挙動は使い方ガイドに、できないことも含めて書いてあります。
どれを選ぶか
- ノートパソコンで読むのが中心で、iPadではたまに確認する程度: Zotero公式アプリで十分です。無料で、注釈は正しくZoteroの注釈になります。
- ライブラリがZotFileやZotMoovのリンクファイルでできている: 公式アプリでは開けません。フォーラムにある「移して戻す」手順で乗り切るか、Rectolyを使うかです。3 つ目の方法も含めた手順はiPad で Zotero のリンクファイルを開く方法にまとめました。
- iPadで何時間も読むので、2段組がつらい: 組み直して読めるのは、4つの中でRectolyの読書モードだけです。
- 考えるときは手書きが中心で、それをZoteroに入れておく必要はない: PDFをGoodNotesに渡して読むのが合っています。
- PaperShipは2019年までなら順当な選択でした。更新が再開されるまで、いまサインインが必要な人には勧めにくいです。
Zotero公式アプリは無料なので、その列はすぐ確かめられます。Rectolyの列は14日間の無料試用で確かめられ、カード登録は要りません。ほかの人がどこでつまずいたかは、上でリンクしたフォーラムのスレッドがいちばん参考になります。